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hellbeyond2012-12-29

 『バイオ・インフェルノ』を観る。
 中学生時分、地元藤沢駅の北口バスターミナルに存在した小ビデオレンタルチェーン、「プラザ21」で購入。この店は一階がアニメや邦画を含む一般作品、二階がアダルトという構造。ホラーブーム終焉後だったとは言え、この店ではまだまだホラー作品のVHSが大きな棚を占めていた。
 当時、私は行きつけのレンタル店「アタック」「アコム」のめぼしいホラー作品をほぼ制覇し、中学生であったことを鑑みても極端に狭かった自分の行動範囲外のビデオ屋に足を伸ばし始めていた。そのきっかけが何であったのかは今となっては判然とはしないが、中学生になったと同時にゲームから映画(正しくはビデオか)への興味の揺り戻し期が来ていたのは確かである。中学校への行き帰りのルート上に「アタック」があり、嫌が応でも店のポスターが目に入ったことがひとつ。また、思春期に突入し自分のアイデンティティを必要とした結果が、当時周囲で興味を示す者の居なかった「ホラー映画」であったのかもしれない。
 更には、幼少時より懐古趣味の一際強かった自分の性癖のせいでもある。
 ホラーは当時粛清の中にあり、一般常識的に「終わったもの」として立場を奪われていたから、自分としては過去の思い出(仮の安寧の中に居た小学校時代を強く追体験させるもの)に容易に浸ることができるツールだったのである。

 なんにせよ、本作のビデオを手に入れたのはそんな時期だった。
 当時一泊500円だった「プラザ21」がある時気まぐれにダンピングセールを行い、店の片隅に床に直置きする形で中古ビデオを販売した。『死霊のえじき』『グレイブヤード』などと一緒に、私は本作をレジに運んだのだった。内容がゾンビ物の変種だということは購入後だいぶ経ってから知ったし、お世辞にも面白そうであるとは言えない本作(しかもどの中古セールでも大体最下値をつけられる)を買った理由は、もしかしたら3本1000円という括りでの特売だったからかもしれない。
 購入後もだいぶ長いあいだ、本作は私の「未見作品」棚に放置されていた。
 一度思い立って(確か購入後1〜2年の間に)観かけたものの、若かりし自分は30分過ぎ辺りで断念。購入後20年近く経った今回最後まで鑑賞したが、部分的にテンションの高い恐怖描写は散見されるものの、『クレイジーズ』ほどエクストリームではないし、規模も小さい。隔離された建物の外で頑張るサム・ウォーターストーンの描写が閉塞感を散らしてしまっている。技術面では、特殊メイク自体はセンス技術共に上々なのだが、決定的なインパクトに欠けるといった印象。ま、これが作品全体の評価とも一致しているといっていいだろう。
 マシュー・ロビンスの脚本は間違いがないレベルなのだが、主人公たちの行動がまず有り、その過程で目的が観客に伝わるという微妙に説明不足な展開が続くため、緊張感がこちらに伝わりづらいのは難点といえるだろう。


 でも、作り手たちのやりすぎな自己主張が少なく、ウェルメイドなものを目指したアメリカ映画を「ビデオで見る」ことの幸せは改めて感じた。
 液晶の16:9画面をぶった切って展開する4:3のトリミング映像。
 こうやって、私はまだ懐古し続けている。その中から得るもので、次の作品を作りたい。