丑刻ヲ過ギテ

hellbeyond2015-10-27

 ずっと形にできないでいる熱。
 僕という人間を、幼稚園年長以来30数年間支えてきたVHSという存在。
 いや、「VHSで観る映画」といったほうがいいか。自分が一番苦しい時期を何度も救ってくれたという点では、親にも増してそれらに恩を受けていると言っていいかもしれない。
 なんにせよ、まだその恩に報いることはできていない。

 
 ビデオ屋が街から姿を消し始めた時、その景色が繋げる末路を僕は知っていたはずなのに。僕がしたことと言えば、焦りに任せて全国を回り、集めたビデオを金に変えたことぐらいだ。
 勿論その金は僕が作る映画の一部に姿を変えたが、僕が受けた恩はそんなことで返しきれるものではない。


 今、僕の手元にある企画の幾つかに、その恩返しになり得るものは存在しているだろうか?
 その作品をつくりあげること。僕が納得する形で。そしてそれを世界に認めさせること。
 『丑刻ニ参ル』が完成して、自分の進むべき道が少しだけ見えてきた。それは想像以上に険しく、傷つきながらでないと進めない道だけれど。
 さあ、ここからは、もっともっと強かに進まなければいけない。