これ以上続編反対

hellbeyond2007-04-07

 『パンプキンヘッド:アッシュ』を観る。


 言うまでも無く名作『パンプキンヘッド』の三作目となる。
 怪物の設定に微妙な揺らぎのある二作目は無視し、一作目から十数年後の同じ町を舞台に、再び魔女の力を借りてパンプキンヘッドを再生する人々の苦悩を描く。
 細かい批評に入る前に断っておこう。本作は失敗作である。
 『トレマーズ3』あたりから、一作目のキャラクターのその後を描き、固定ファンの評価を狙う作りのB級続編が目立つ。更に言えば、その殆どが劇場公開作品の続編をビデオスルー/TVムービー化するというパターンである。
 結局それは金を掛けられない分、ファンが思い入れのあるキャラを生かすことで興味を引こうということ。
 今作もそういった脚本作りの面では健闘している。ヘンリクセンもそういう本があったからこそ、殆ど本筋に絡まない特殊な位置での出演を承諾したのだろう。
 しかし、脚本が出来上がって撮影が始まるまでの間に、本作のスタッフはとある重大な間違いを犯してしまう。
 ロケ地をアメリカ南部の荒涼とした片田舎から、どこか湿気てうそ寒いルーマニアの辺境に変更してしまったのである。しかし設定上はやはりアメリカの片田舎。看板や小道具をいかにアメリカ風にしようと、どう見ても違う植生(森の中のシーンが多いだけに悲しいほどそれが目立つ)や建物の作りから襲う違和感は絶望的で、自分も必死に「脳内補完」を試みたがそれも無駄な努力。結局ラストまでこの座りの悪さが消えることは無かった。
 更に本作には、そういった違和感を中和してくれるまでの「美点」が見当たらないのである。
 ゲイリー・J・タニクリフ(最近『ミミック3』で少しだけ見直した)による怪物は及第点だが、人間が中に入って演じるタイプのスーツにしてしまったのは大きなマイナス。二作目のような噴飯モノのおもしろ動きまでは見せないものの、足の逆間接を常に「フレーム外」に追いやる後ろ向きなカメラワークを撮影部に強いたのは彼の罪である。怪物演出も粘りの少ない淡白さで、上辺だけをなぞったという印象に終始。CG製パンプキンヘッドはCGにした意味のない体たらく…と怪物だけを目的に本作を観ると手痛い目を見ると言っておく。
 唯一言えるのは撮影技術の高さ。特機を駆使した高尚ささえ感じさせるカメラワークと鋭角的な照明は本作には勿体無いほどのレベルだった。お陰でパンプキンヘッドへの愛のなさが強く浮き彫りになり、結果寂しい出来の本作が仕上がってしまったというわけだ。
 老婆の小屋のセットや小道具はいやに拘って一作目に合わせていたが、あれは何か意味があるのだろうか?
 あと、本当にどうでもいいポイントとして、『ヘルレイザー』のパズルボックスも登場していた。
 そんなことをする位なら、一カットでもPHの寄りを撮ってくれればよかったのに。
 口や指先のどアップにも耐えるモンスターを創造した一作目のクルーには心から尊敬を表したい。


 本作はアメリカよりDVDを取り寄せての鑑賞。リージョンコードは1(日本製プレイヤーでの再生不可)と明記してあるし、リージョン変更済みである自宅のマックでの鑑賞を覚悟していた。しかし試しに…とTVにつないであるビクター製のプレイヤーにぶちこんでみると難なく再生可能。しかも日本語字幕選択可能は勿論、メニューやチャプターまで日本語になっている。
 版権元がソニーピクチャーズだからだろうが、そういう意味では嬉しい誤算である。