『ザ・リッパー』『暴行都市』…嗚呼B級女子

hellbeyond2005-02-22

ルチオ・フルチではない。
'97年に製作されたユニバーサルテレビジョン用のTV映画である。


『新・鳥』(リック・ローゼンタール監督)『愛しのルーシー』(フレッド・ウォルトン監督)など多くの秀作TVムービーがCICビクターから発売されているけれども、CICって凄くシックなジャケットデザインだし、知名度の低い作品をおとなしい邦題で出すことが多いから、ビデオ屋仕入れないんだよ。
よって発売されているけれども誰も観たことがない、という作品が多く生まれてしまう訳で。
この作品も中古屋で観るまで存在を知らなかった。
パトリック・バーギン、ガブリエル・アンウォ−、サミュエル・ウェストを配したジャック・ザ・リッパーの事件何度目かの映画化。
オープニング、カメラがロンドン上空から浮遊感たっぷりに貧民街まで落下していく、CGとミニチュアを見事に組み合わせたシーンが登場。TV映画がオープニングに凝るって言うのは非常に珍しいのでちょっと画面との距離が縮まる。
物語は敏腕警部とリッパー、そしてリッパーの顔を知る若い娼婦の三人を軸に展開。のっけから観客にはリッパーの顔が割れており、犯人当ての見せ場は放棄した上で進んでいく。
この映画の見所は二つ。ガブリエル・アンウォーの魅力と、ロンドンの貧民街を再現したセットだ。
アンウォ−…多分僕は中学生の頃観た『ボディ・スナッチャーズ』の「人類最後の女の子」が初見だとおもうけど、ちょっと危なっかしいと言うか、ともすれば怪物にやられてしまいそうな儚さが漂う女優さんだと思う。
この作品では上品な顔立ちを生かして、両親の転落を経験して身を持ち崩した娼婦を演じている。TVムービーだし派手なヌードはないけど、白い、あれなんて言うんだろう。ノースリーブの…昔のイギリス庶民が身につけてた肌着?で主人公と戯れる描写などあって、ドキドキしました。突然敬語。
あとセットに関しては、アメリカ映画で昔のロンドンを再現って、最近あんまりなかったように思う。思い出せる所だと『インタヴュ−・ウィズ・ヴァンパイア』ってそうだったかな?
また、貧民と彼らを護るべき管轄の警察たちの意識の違いが捜査を阻害したりと視覚的にだけではない研究の跡も見られ(脚本ロバート・ロダッド)、やはりCICさんにはDVD化を希望したい。このくらいのレベルの作品は。


次いで途中まで観てた『暴行都市』を鑑賞。


リンダ・ブレア率いる不良少女集団。敵対するパンクスに唖の妹をレイプされ、妊娠中の仲間を転落死させられたブレアはブチ切れ、ボウガン片手にゴミを狩り出し始める。
もともと余り好きな女優じゃなかったのだが。お世辞にも美人でもないし。今回も序盤に教師が「君はルックスも良くて頭もいいのに…」ってセリフがあって、教師の鑑だなあと思ったりしていた。
しかし…物語が復讐のくだりに差し掛かってくると、段々ブレアの後ろに後光がさして見え始めた。
いや、ブレア姐さんイカス。女囚でも不良でもやるこた同じ。煙草の煙を吹きかけ、アネゴ喋りで敵を威嚇、ムカつけばすぐキャットファイトを挑む(ちゃんと平手による女の子殴りで闘うプロフェッショナルぶり)。今回はマジでカッコよかったなあ。夜のロス(ハリウッドブルバード?)でランドローバーを駆り、武器を揃えていく様なんて…後ろには車のライトが流れてとってもイイ風情。
倉庫街を舞台にした復讐戦でパンクスは次々とえじきに。だって相手が悪いもの。ボスに至ってはボウガンの矢をニ本、ナイフを一本頂き、猛獣用の罠に引っ掛かって吊るされた上に可燃性ペイントをブッかけられて燃され、何だかわからないことになってました。
思いを遂げたアネゴ、お縄になって物語は『チェーンヒート』に続くのかな、と思いきやラストシーンではちゃんとメンバー総出で殺された女の子のお墓参り。
咎め無しかよ!?…まあブレア姐さんのやることだしなあ。
蛇足ですが音楽がとても良かった。シンセ使いまくりの'80年代ロックばっかりで。'80年代の文化が基本的に大嫌いな自分ですが、ストレートに歌われたロックと愛のある映画に限って言えば大好きです。
何と向こうではサントラも発売されたことがあるらしい。まあレコードだろうけど。
欲しいなあ…。