『ブラディ・ヴァンパイア』

hellbeyond2005-03-03

本当に、本当に酷いタイトルだ…。
最近、ソニーピクチャーズが出すB級映画の邦題に怒りを感じる。
作品に愛がないなら出すな。
酷い映画を売れそうな邦題で、出鱈目なジャケットで発売するのはまだ許せる。
商品を良く見せようというのは当然の努力。


苦言を最初に呈したのは、この作品が途方もなく面白いシリーズになる可能性を秘めているから。
ブレイド』シリーズ一連が金を掛けてマニアな監督を呼んだ割に玄人受け要素が少ない子供向け映画だった(まあ主演が子供だからしょうがないが)のに比べ、こちらはしっかり地に足をつけた上質かつ刺激的なディテクティブ・ヴァンパイアアクションに仕上がっていた。
ヴァンパイア映画ファンも納得のゴシックな画作りを基調にした上で、セット、小道具を含めた’50年代あたりを意識したヴィジュアルを展開。
例えば女性の髪型、登場する記者の持つカメラ、刑事が着込む着古したロングコートまで気持ちよく観客を作品世界へ誘ってくれる。舞台を近未来世界とし、人間側の風俗も多少映像的に突飛なものにしているため、ヴァンパイアたちの格好、登場する住処などのヴィジュアルが浮いていない。「近未来だが古ぼけている」もしくは「近未来のヴィジュアル=近過去のヴィジュアル」という名作『ブレードランナー』や『ウェストワールド』が提示した方程式を忠実に受け継いだ作品である。
ヴァンパイアを一つの人種として捉え、人類が過去に犯して来た差別に根ざした虐殺に怯える人々として描き、その上でメインで登場するヴァンパイアは一種崇高かつ冷血な、ともすれば拮抗しかねない雰囲気も兼ね備えている。この辺りのバランスは相当難しかったはず。脚本の勝利である。
また、吸血鬼映画ファンへの目配せとして、登場人物の名前を「オーロック」「バーバラ・スティール(!)」とするなど細かく気を利かせているのもいい。


ただ一つだけ惜しいのは、これは監督の責任ではないかも知れないが、アクション描写が今いち(けして下手ではない)であること。格闘や銃撃戦に作るべき流れ、落とすための「決め」のアクションが微妙に決まっていないため、「歯がゆい」という印象を受けてしまう。作品的にアクションは決してメインのファクターではないのだが、ストーリーに緩急をつけるための見せ場として取り入れない訳に行かなかったのだろう。ここはちょっと惜しい。エイドリアン・ポール演じるヴァンパイアサイドの刑事がニ丁拳銃で横っ跳びするシーンなんて「ああ監督!慣れないことしなくていいから!」ってやきもきさせられた。
まあそういったアクションのクオリティも、全体を通してみればかろうじて破綻はしていないので一安心。
ちなみにこの作品に発売元のソニピがつけたコピーが以下の通り。


『SEXYヴァンパイアが『マトリックス』スタイル・アクションで暴れまくる。』


…宣伝担当者、一遍死ぬか?



俳優ではエイドリアン・ポールとボキーム・ウッドバインが肌の色も、人間とヴァンパイアという意味でも相容れない刑事コンビでなかなかいいコンビネーションを見せていた。ポールは『ハイランダー4』で慣れたからか、今回はワイヤーで吊られまくってました。
あとミステリアス且つ超艶っぽいヴァンパイア女性を演じたバイ・リンがよかったー。
可愛い人です。ファン。
メインキャラは残ったし、まだ事件は他にも…ってラストだったし、これは是非シリーズ化して欲しい。
原題は『THE BREED(種族)』。気にしておこうっと。


追記:『デッドリー・ドリーム』を観た。睡眠導入剤として見始めたのにちゃんと最後まで観れた。
安売りビデオ屋で頻繁に見かける作品だけれども、これは佳作。'80年代の殺人鬼映画としては良く出来ているといっていいだろう。何でも許されるようで居て、バランス、統制が非常に難しい「夢」のシークエンスがよく計算され、錬られていた。同時に映像上での具体像を持った暗喩の作り方が上手い。
残念ながらクライマックスでミステリーとしては破綻するので「佳作」どまりだが、普通にお薦め出来る作品だった。
今度こそ寝ます。