動機を探せ

hellbeyond2005-10-17

改めて、映画に限らず脚本に絶対必要なのは主人公の行動や取り扱う事象(戦争、災害、etc.)など物語のメインファクターへの説明、理由付けである、と寝起きのシャワーを浴びながら気付いた。


主人公が相手のどんな所に惹かれたか、という説明の無い恋愛映画には感情移入しづらいだろうし、パニック映画でさえ、それらしい登場人物をわざわざ登場させてその現象の説明をしてみせる(実は、これを上手く省いた映画の方がパニック映画としては上質ではないか、と今思った)。
もちろんホラー映画であっても、それは当てはまる。心霊現象の因縁や殺人鬼の動機についてそれなりの説明をしてくれないと、観客にとって、ただ訳の判らない物語となってしまう恐れがある。


昨日と今日、二回に分けて観たブライアン・トレンチャード・スミス監督の『ゴースト・マーダー』も、基本的には間違った演出やストーリー運びは無いにも関わらず、心霊現象へのそうした理由付けが甘い為、作品の印象として相当損をしている作品だった。主人公は、女性が惨殺される夢を何度も見るが、現実でもその女性達は死体で発見される。まあタイトルを見ればネタばれ以前の問題なのだが、主人公を介して人を殺しているのが何なのか、そして何のために、という部分に全く説明が無い。もう少し物語に広がりがあって(殺されるのは主人公の身の回りの人ばかりだ)、画や物語のテンポで見せられる作品であれば話は違うが、この作品においては現象への言及が無いとストーリーの求心力も失速し、観客の集中力も切れてしまう。ラストまで観ると『エクソシスト』がやりたかったのだと判るが、『エクソシスト』だって一連の現象に対する説明はしていたのだが…。
スミス監督は『クエスト』『デモンナイト』など手堅いエンターテイメント監督らしく、アップと引きの切り替えなどオカルト作品としてはSFXの少ない画面ながら上手く処理し、画には観続けるだけの力があっただけに本当にもったいない。クライマックスの廃工場でヒロ
インが演じる一人カーアクションなど結構盛り上がる。


だがまあ、最近観たホラー映画の中では上質の部類に入るだろう(本当にレベルが下がってきた)。