よるのおと

hellbeyond2005-11-14

 犬を深夜散歩させている途中、思いも依らない「楽器」に出会う。

 地元は東海道藤沢宿だったこともあり、古刹や蔵が多いのであるが、それに伴い住宅街の中に普通に広大な墓所が存在している。その脇を通ったときのこと。
 匂いはからきし駄目だが、何故か音には敏感な犬がそわそわし始めた。やがて僕の耳にも入ってくる小さな音。
 音は足元からだ。よく見ると小石のようなものが一面に落ちている。
 上を見上げれば、黒い空より更に濃い黒でもって路地を覆う木の梢。辿ると、墓場の中に椎の巨木が鎮座している。
 風が吹く。
 枝が震え、重みに耐え切れなくなった椎の実が落下し、草むらに、墓石に、自分に、落下する。
 おとが響き、一瞬遅れて犬が反応する。
 
 墓場で育った木が鳴らす音。
 水の入ったかめを、下に沢山ならべてみたい。
 でも住職におこられるからやめよう。
 あそこの坊主、生臭だから。