Doomed by the FIXED FRAME? #2

hellbeyond2005-12-12

 さて、第二回である。


 助監督になるには…ということで前回(11/19)は色々書かせてもらった。
 読み返してみるに、自戒も多分に含まれていることよ。
 要するに、いつまでも高校生でいられるかってことなんですよ。
 で、それに加えてそういった青臭い理論を武装できるだけの実行動が伴っているかということ。当然のことなんだけど、その当然を当然として実行するには、核となる「行く先」=「辿りつくべき影像(イメージ)」がないと駄目。
 後は、これ先天的な才能の問題を取り沙汰するのとあまり変わらないから嫌なんだけど、決定的な要素として「作る動機」が自分に与えられているかということ。
 それはティム・バートンにすれば「自分を嗤った奴らへの復讐」、スピルバーグにすれば「自分が怖いものの克服」だったりする。これが無い人が作り出すもの(言うこと)って、必然性が感じられないんですよ。観客ってそういうところには非常に敏感だから。…ていうか単純につまらないよね。そういうのが無い人が作り出すものは。


 この間飲んだ助監督が、「自分は次へ、またその次へと作らせてもらうために(もらう…?)、こだわりや予算や諸々を7割で作る。で、そのうち本当に作りたいものを作る」と発言していた。
 自分と非常に近いスタンスを持っているとある表現者の方の言葉を借りると(残念ながらこの方は映画製作者ではないのだが)、
「今本気出せない奴は、いつまでたっても出せないよ?」。
 ポコのねえちゃんの言葉を借りれば、
「明日っていつ?」
 ってことになる。
 そういうのはまず自分で何でもいいから作ってから言うことでしょう。


 さて、
 今回は「監督になるには」というお題である。
 未だスポンサーの付いた作品を監督していない自分が書くのもなんだが、まあそれに拒否反応を示す方は何処かもっと有意義なページに飛んでください。


 現在まで、自分が知る中では、「日本の助監督」で創作的な魅力を感じる人間は一人もいない。
 それは単純に「助監督」という職業が創作的ではないからだ。どんなに頑張っても、監督のイメージを源泉に近い形で映像に起こす程度。
 逆に、助監督のイメージが監督のイメージより先行すると(若しくは鋭利だと)、その作品は破綻する。強烈な他人のイメージを受け入れられるほどの創造力をもった監督は、日本映画界には本当に一握りしか居ないと思う。
 勿論助監督という仕事は、映画の構造を知るにはもってこいである。
 逆に、助監督経験のない人間が映画監督として優秀な能力を発揮することは相当難しいだろう。だから、「助監督になるのが監督への第一歩」というのは、今も昔も変わっていないと思う。只、その意味合いは相当異なり、かつては確かに助監督としてキャリアを積めば、いずれ監督の椅子(どんな作品の監督かは置いておいて)が約束されていたという時代もあった。現在、ただ助監督だけやっていて監督になれる確率は限りなく0に近い。
 いや、これは言い切ったほうがいいだろう。
 そんなことはありえない。
 だから、映画の端っこにしがみついていれば幸せだという人、若しくはこの年で他の職業に就くのは無理だと思っている方を除いて、本当に監督になりたい助監督は今すぐ助監督を辞めるか休業して、企画を立てるなり脚本を書くなり自主映画を撮るなりしてください。


 さて、そこまでをクリアしたら、今度はどんな姿勢で創作に臨むかである。
 まず、自分(自作)を売り込む最良の方法を考える。
 ここで自分(自作)と真顔で向き合えない人間は脱落する。
 それは、自分(自作)の弱点をも見ることであるから。
 風景の些細なノイズに独自性を感じることが多い人は、イメージ映像を作ってみればいい。
 脳内映像の文章化に自信がある人は、企画書や脚本を書いてみる。
 絵がうまい人は、コンテやイメージボードを描いてみる。
 勿論、複数攻勢のほうが数段相手の防壁を崩す可能性は高い。
 そういった自分の得意分野に企画内容を引き寄せる売り方を考える。
 なに?得意分野が無い?…はは、じゃなんで作ろうとか思えるの?


 また、企画・創作に当たっては、考えうる限りの勉強(過去の同種作の鑑賞、関連書籍の読破、普段からの脳内ロケハン…)を怠ってはならない。
 誰かに見せる企画を作るなら、少なくとも見せる相手よりその題材について知っている、というのが礼儀である。
 良く、「他人の作品を観ると真似しちゃうから」とか言い訳する人がいるが、他人の作品に触れたくらいで形を崩す、または意味をなくすイメージなど、きっともとより具現化する意味の無いものだったのだ。
 そうやって幾つもの関門をくぐって残ったイメージだけで構成された作品にこそ、観せる価値があるのではないだろうか。


 長くなったので今回はこの辺で。
 また書きたくなったら(下らない映画人と会ったら)次回となります。