LIFE STINKS

hellbeyond2006-10-31

 別に今の心境ではない。
 メル・ブルックスの秀作コメディであり、自分の中でベストのメル映画の原題である。邦題は酷すぎて紹介する気にならない。興味のある方は調べてみてください。
 今日、『プロデューサーズ』('69)に続いてメルが発表した初期の作品『12 Chairs』を観た。
 後年の『サイレント・ムービー』からも明らかなように、彼の作品作りの根底には映画創成期への思い入れがあり、本作もロシア映画の体裁を取りつつ、共産主義と拝金主義を両成敗的に風刺した傑作コメディになっている。突如として無声になり、こま落とし的に動きを早くしてコミカルさを増したり、ドリフっぽい見て分かりやすい物品破壊系ギャグも多数。
 けど、『LIFE STINKS』もそうだけど、ここぞって言う時の、(例えば喧嘩しながらも一緒に宝石が隠された椅子を探してきた相棒と別れなきゃって時の主人公の顔とか)登場人物たちのやるせなく放心した顔のアップはしっかり長回しのクローズアップで見せてくれる。金欠の主人公を画面のメインに据え、彼がそれを必死に補おうとする様を可笑しく見せ、それが達成される寸前で、ブルックスはいつも残酷な失望を用意する。
 でも、その先に、必ず「もっと大切なもの」も用意している。それに気づかされた主人公たちは、半ばやけっぱちで、でもとても楽しそうに、それに飛びついていくんだよなあ。
 『12 Chairs』では、その一番いとおしい瞬間で、映画を終わらせてくれた。


 没落貴族と農夫のコンビが、貴族の家宝が隠された12脚の椅子を巡って強欲神父と繰り広げる争奪戦。
 邦題はまたしても酷い(けど知名度が低いので一応紹介。『メル・ブルックスの命がけ!イス取り大合戦』。ね、酷いでしょ)。
 未見の方はぜひ。