thumbtripping

hellbeyond2006-11-24

 これから年末にかけて日本画/現代美術の新鋭・早川剛氏の個展の手伝い、引越し、作品制作と自分的に楽しいはずのイヴェントが目白押しな折、すごい風邪を引く。
 どのくらい凄いかといえば、突然片方のミミが聞こえなくなるくらい。
 なんか耳鳴りするなあ?と思っていじったらいきなりモノラル音声になって、食事中にいきなり一人で「あれっ?ミミが片方聞こえないんだけど、あれ?」って久しぶりに一緒に食事中の家族を驚かせてしまった。
 三十秒くらいでウルトラステレオに戻ったけど、健康って大事ね。
 って痛感。『コップランド』のスタローンな気分でしたよ。と。


 『青春のヒッチハイク』(’72)を観る。
 『ヒッチャー』を期待して観たのだけれど、恋愛に対して本当に真摯な姿勢を保っていられた最後のニューシネマな傑作。
 お互いヒッチハイク中に知り合った若い男女が意気投合してカップル化。様々な変態野郎や暴力母、不満だらけのブルーワーカー等どリアルな問題児ドライバーどもに遭遇して社会の嫌味に気づかされるって体。
 理想主義で青臭い主人公に途中から感情移入が出来なくなる(だってすぐ騙されるんだもん)。でもそれは演出の意図。
 観客が主人公に同化するのではなく、まるでヒッチハイクで出会う人間一人ひとりがそうであるように、主人公を「たまたま知り合った人間」というスタンスで観ることを可能にしている。感情移入せずに面白く見られる物語!自分にとって、この作品との出会いはささやかな結節点になる気がする。
 そして、物語の中で出会った男女は必ずしも劇的な結論に達する必要はない。相容れない部分が多ければ、結局「たまたま知り合った人間」に戻っていくのだ。そしてまたふたりは別の誰かを探すだろう。もしくは別の何かを。
 狭窄的に、一人の人間に固執しないこと。
 恋愛に対してここまで厳しい映画も珍しい。
 広い意味では、まだ「絶望」する前の世界が、ここにある。