万歳攻撃

hellbeyond2007-07-09

 新作系駄目ホラーの連続鑑賞に再起不能寸前である。
 『デッド・フライト』
 『ディセント』
 …ため息しか出ん。って一言で終わらせたいけれど、一応何故駄目か書いておく。後学のために。


 『デッド・フライト』…旅客機の中で発生したゾンビに『エアポート』的パニックを混ぜた作品なのだが、総尺の中におけるゾンビ発生が遅いとか、旅客機に機密アイテムを載せるなとか細かい部分はひとまず棚上げ。だって戦闘シーンが面白きゃB級なんてそれでいいんだもの。ということは、詰まらんのである。戦闘が。
 ゾンビ映画に大事なのは主人公達人間の「テリトリー」とゾンビどものそれがはっきりと分かれているということである。『ナイト・オブ〜』『バタリアン』『サンゲリア』を思い出して欲しい。『死霊のえじき』に到っては、エレヴェーターとゲートというあからさまな「境界線」さえ設置する徹底振りだ。そうあるからこそ篭城戦が成立するわけだが、主人公達が飛行機のどこに居るのか、そこはどの程度の密室性と耐久力があるのか、が全く説明されていない本作においては、「自分の身を守る」上でのスリルが発生しないのである。場面移動に使われる排気ダクト、旅客エリアの下にある貨物スペース(ゾンビがいっぱい居るらしい?)と主人公達の現在の位置関係も不明瞭。それは前出の「テリトリー」を曖昧にさせるだけの存在でしかなく、邪魔この上ない。
 また、ゾンビの強さが発生直後は超人的で無敵なのに、後半はただズタボロに撃たれて血肉を発生させるのみの存在に成り果てており、監督らスタッフが疲れてきて「もうノリで仕上げりゃいいっしょ」という段階に到っているのがとてもよく判る。もうこんな仕事を舐め切った連中に言いたかないが、「怪物の強さ」に一貫性がないと、登場人物の生死に対する観客の興味なんて持続する訳がないのだ。


 …という所が共通して駄目なので『ディセント』に移るが、モンスターの一撃必殺力に一貫性がないのである。これも。
 洞窟に閉じ込められた主人公達女性のマッチョ・ウーマン変化も突然過ぎ、怪物が襲うたび「今だ!コロせ!」って怪物を応援している自分が居た。次から次へと、怪物への恐怖感や嫌悪感を覚える暇もなく駄々漏れに襲い続けるモンスター…暗闇というアイテムを「暗くすりゃ恐い便利なモノ」と勘違いしてしまった点においてウンコ映画『ピッチブラック』とも共通。
 大体、オープニングの夫と娘の死という要素が「全く」「これっぽっちも」ストーリーに寄与していない。擁護派からの、え?あのラストは?って声が聞こえてきそうだが、ありゃクライマックスが盛り上がんなくて落ちないから無理矢理思い付きで付け加えちゃっただけだ。どうせオープニングもそこからの逆算で追撮したんでしょ。あの取って付けた感。
 なんだか、最近のホラーって「着地点」(本作で言えば洞窟落盤→地底人登場)に諦めを含んだ一本調子で進む駄目さが顕著である。だから、そこに至るまでは焦れったいだけで緊張感なんて無いし、「作り物」臭がプンプン臭うわけだ。
 この監督、本質的にはホラーに興味ないぞ。


 昨日は口直しに『ザ・フライ』を観る。
 本作は同じように融合という「着地点」までは異様に一本調子だけれど、それ以後に慎重な間隔で配置された「事件」に見所がある。
 意外性も多分に含みながら、「来るべき結果」を感じさせるラスト。小説家を目指していたというクローネンバーグの出自がとてもよく出ている。