動くな 騒ぐな 息もするな

hellbeyond2007-07-10

 『2001人の狂宴』('04)を観る。
 殺人南部人どもに捕獲される若者達に観客が感情移入可能な程度には演出が努力しており、本作のような屑畑からの出自を持つ作品としては上々といったところだろう。
 しかし一点、どうしても見過ごせない問題が。
 ホラー映画の魅力(言い換えれば、様々な構造を持った恐怖映画をひと括りに評論する場合、一先ずの基準となる箇所)とは、怪人などの脅威から「いかに逃げ遂せるか/捕まるか」である。そこが上手いか下手かで監督の技量が分かる。
 『エイリアン』で、トム・スケリットのその後を見せなかったのは「その必要がなかった」からだ。
 捕まった後の展開は後戯でしかない。基本的に自分はそう思っている。
 そこで本作だが、祭りに興じている振りをして逃げようとする過程とか、村人の本性に気付いて逃げ惑う若者とかそういったシーンに力を注ぐべき所・・・がどいつもこいつも直ぐに脱出不能な状況に陥るので、如何ともし難い寸止め感が残るのである。
 十分に逃げ惑う描写がなかった人物の死に、観客は痛みも嫌悪感も共感も感じないと思うが。
 SFXは自分もショーン・S・カニンガム作品でお世話になったSOTA FXのロイ・キニリム。CGを抑えた作りの本作を及第点に仕上げた職人的技量は流石。しかしデザイナーとしてのこの人に魅力を感じないのだよなあ。どうしても。


 その後、デヴィッド・アレンの人形アニメが活きている『ドラゴン・ワールド』('94)なるジュヴナイル・ファンタジーを鑑賞。
 本作はどうしても観たくてビデオを探していたのだが、結局サンプルビデオ(それでも発見に四苦八苦…)での鑑賞となった。
 基本を押さえた安心できる作りにカメラワークありのドラゴン描写、たまにフルムーン作品の枠をはみ出たスケールのある画柄が挟まる。それ以上何もいらない。秀作。
 しかし、チャールズ・バンドの作品で涙を流すとは思わなかった。


 本日のタイトルは、未見時はそのあんまりな文面に笑ったものの、本編を見て的確さに震え上がった『ジャッジメント・ナイト』チラシの惹句。
 自分が言う演出力のある「いかに逃げ遂せるか」ってこういうこと。