二度目の轍

hellbeyond2007-07-23

 『マシニスト』を観る。
 ここまで見事に大空振りで失敗されると、いっそ気持ちいい。


 終幕付近まで観客に理由は明かされないが、一年間もまともに眠っていないらしい男の日常。
 まず冒頭に、この男が死体を海に投棄する様子が簡単に描かれる。
 殺害の理由、被害者は解らない仕掛けになっている。これってこの主人公には釈明の余地がないということである。何の予備知識もなしに殺人者(しかも卑劣な)との紹介をされた男に感情移入なんて出来ない。だから、この先彼がどんなに苦しもうとも、娼婦やウェイトレスとまともな関係を築きそうになっても、全然興味が持てないのである。
 更にこの映画で彼を襲う神経症的(と、監督は思ってるんだろう)な出来事の数々は非常に安っぽいものばかりである。それは映画的に安っぽいというか、まんま「映画みたい」な描写ばかりなんである。現実に置き換えた時に成立しない幻想であるというか・・・。鏡越しのドッペルゲンガーの見せ方なども既視感で眩暈がしそう。これでは感情移入が成されていたとしても、単なる出来損ないのスリラーでしかなかっただろうな。
 コケおどしばかりである点については、劇中にカーニバルのオバケ屋敷を大フィーチャーするなど一応自覚的なのか?とも思ったが、ラストの捻りの無さを見ると偶然の様でもある。
 最後まで観れたのはクリスチャン・ベールの外見に頼らない真摯な芝居があったから。


 監督のブラッド・アンダーソンは『セッション9』でも一番つまんない「物語の真相」を選択する駄目坊主なので、ま、予想の範囲内の駄目作品ではあったな。