フラワー

hellbeyond2007-07-19

 傑作コメディを二作品鑑賞。
 『アメリカン・パイ』(’99)
 『ギャラクシー・クエスト』(’99)。


 どちらも(この言葉は強すぎるけどこれに変わる言葉が見つからないので使うが)自意識過剰な、冴えない人間の抱える不安を絶妙に刺激する。
 これほどまでに登場人物を愛した作品は…と書き掛けてイヤ、と思う。
 愛した、という言い方は的確ではない。彼らは全ての登場人物に愛情を注いだわけではないから。
 『パイ』の製作者はヤルことしか頭にないジョックスを、『ギャラクシー』の製作者は大人の象徴たるトカゲ宇宙人を、「愛して」いた訳じゃない。
 悩める主人公達を思うからこそ、ああいう的確な悪役を配置出来たのだ。
 特に『パイ』に顕著だけれど、複数キャラクターの役割分担が異様に上手い。んで、「童貞」とか、「郷愁を誘う往年のTVシリーズ」とかを「好きだ!」って叫ぶことに躊躇が無い。そして叫ぶ前にやるべき宿題…エンターテイメントとして作品を完成させる努力…をきっちりこなしている。
 両方オススメだが、さらっと面白い『アメリカン・パイ』よりは、刹那的なネタとしてしか「過去の映画」を引用できなくなっている最近のコメディの鬱憤を吹き飛ばすような脚本の完成度を誇る『ギャラクシー・クエスト』を薦めたい。


 昨日は、近所の球場に母校が試合に来るということで、初の高校野球観戦に出向いた。
 在学中は全く興味が無く…というか意識してそういう「真っ当」なものから目を逸らしていたので、サウナ状態の体育館の中、部活に向かう途中ぼんやりと「野球部が二回戦に進出しました」…とかって放送とそれに次ぐ遠い歓声を聞いた様な記憶しかない。
 今回は高校野球ファンの友人に誘われたということもあり、脚本執筆の憂さ晴らし程度の気分で出掛けたのである。
 しかし、母校の試合を生で見るって緊張感は容易く「瞬間感情移入装置」である自分の脳を支配し、本当、ガキの頃『バタリアン』を観て主人公のオヤジ達に掛けた「死なないで」って願いと同じくらいの真剣さで「頑張って」と祈っていた。開始五分くらいで既に。
 相手は地区の常勝校。端から勝利は望んじゃない。
 でも、野球が苦手な自分にはどういう脳を使えば投げられるのか分からん球を駆使して真剣に闘う、そして彼らを応援する母校の生徒達の姿には、(自分にとって)抜き差しならない何かを感じた。
 歴史上一回しかない「一球」「一打」「一投」に集中する、というハードな状況。思えば高校生くらいまではどの結節点も一回しかなかった。試験に恋愛、部活や塾の選択・・・さらっと提示された一回で下した決断に、当たり前のようにその後何十年かが支配される。
 適当やってあるかなきかの「次」をあるとして何とかやるっていうことを覚えた自分をチラと思う。
 兎に角あの場所で「常勝校」に向けられた彼らの視線は、疑う余地の無い「本物」だった。
 成程、「高校野球に元気を貰う」とかいう人の気持ちも解る。