「俺は、今では、伝説の怪物なのだ。」

hellbeyond2007-10-15

 師匠に頂いたDVDで『地球最後の男』('64)を観る。


 『恐怖城』を始め様々なゾンビの原型を観てきたが、その極北であり、最終的に同ジャンルが帰り着く(べき)場所とは本作だろう。
 舞台的で大仰な演技が多いヴィンセント・プライスとは思えぬ「普通の人」としての芝居(そしてそれは本作に最も求められるものでもある)は見事に決まり、終盤で展開される価値観の逆転を強く印象付ける。自分と異なる価値観や生き方を排斥しようとする方々に観て頂きたい。
 でも、そういう人たちって大概にして意識的ではないから性質が悪いんだよなあ。…いや、努めて思考停止を行っているのか。この映画の登場人物たちがそうしているように。


 日本版の発売が遅れたのは、ジョージ・A・ロメロ神話を崩すまいとする(そしてゾンビ関連で収益を上げようとする)一部の人々による画策のような気さえする傑作。勿論そのオリジンはリチャード・マシスンの傑作小説にあるわけだが。
 本作はアメリカ/イタリアの合作。イタリア資本が入っているせいか、同年代の作品にしては直接的な死体描写が多い。ある程度の現実主義が必要な作品であるだけに喜ばしい。そしてその寒々しく、容易に戦場を想起させる光景はロメロの『NOTLD』に引き継がれた。