色のある世界から

hellbeyond2008-05-24

 祖父が撮りためていた写真を作品中に使おうと思い立ち、昨晩は久方ぶりの地元へ。
 自分の祖父は戦前から某新聞社に記者兼カメラマンとして勤務しており、昭和二十年前後という時代でも、家族写真を撮り続けることができた幸運な人であった。


 今現在自分が関わっている作品の年代表記が有るアルバムを引っ張り出し、ペラペラとめくる。祖父の、家族(特に息子たち)に対する愛情が、そこかしこに力強く印画されている。細い字で控えめにつけられたコメントを読み、祖父が覗いたファインダーの視点を共有しているうち、ふと、ある文章に出くわした。


 ハイセン ノ クルシサ ガ
 ヒシヒシ ト ミニセマル
 センソウ ナド モウイヤダ
 コノコノ一ショウニモ
 センソウワ ナイヨウニ


 目頭が酷く熱くなる。嗚咽が零れそうになるのを必死でこらえた。
 「真実」を「真実」らしく見せるために、文字の手を借りることも辞さなかった祖父の思いを、映画作家たる自分は継承していきたい。そう思う。