夜明け前

hellbeyond2010-01-09

 上海で購入以来積んだままになっていた海賊DVDの一本『13日の金曜日 序曲』を鑑賞。
 コレクターとしては、かつてクラリオンビデオから出ていた国内版VHSを発見/鑑賞したかった作品ではあるが。
 これは優秀なB級映画人が世界中の製作状況に無自覚に作れた時代だからこそ出来た、内向的なまでに無邪気でひねりの無いキャンプホラーである。世界中に存在する同様企画の存在を知っていたら、また他作品の似たような描写を観てしまっていたら、ここまでブレずキャンプホラー描写に徹底できただろうか。
 才能ある低予算映画製作者が自信を持って製作できる状況が少なくとも90年代半ばまではあったのだ。うらやましい。
 原題は「Just Before Dawn」=夜明け前。そう考えると、なんだか因縁を感じるタイトル。
 んで、内容は邦題に反して『悪魔のいけにえ』的ストーリーで展開。個人的にこれは『マザーズデイ』以来の、作品内で見せなきゃなんないもの、そして見せちゃいけないものが判ってるキャンパー惨殺映画の秀作。ジェフ・リーバーマン監督作として観ると『悪魔の凶暴パニック』的粗暴で予想のつかない展開は失われているものの、木に登って難を逃れた女性を殺人鬼が木を切ることでジワジワ追い詰めるなど素晴らしい。山という縦横上下に展開できる舞台を生かさない手はないというわけだ。
 逆に見せちゃいけないもの?んなもん決まってるでしょ。
 自分は高校生当時『陰獣の森』+『新バーニング』という、そういうことを考えもせずただ山をうろうろして作った作品を連続鑑賞して心が折れそうになった(てか寝た)経験があるが、あの時は「これがまた詰まらなかったらしばらくキャンプホラーは控えよう」と観た『ファイナル・テラー』に救われたのだった。
 今回も、この作品に救われた。まだホラーファンで居続けられそうだ。


 そして久々に観たこの’80年代ホラーに思い出した。
 夢中でビデオを漁り見ていた頃、しばしば誰もレビューをしていない作品=「もしかしたら世界中で自分だけしか存在を覚えていないかもしれない作品」を鑑賞することが出来ていたことを。
 インターネットでほぼ全年代/全世界の作品の存在と出自が白日の下に明らかにされてしまった現在。古雑誌の作品リストからも抜け落ちていた、存在すら知らなかったマイナー作品を棚の隅で発見する喜びは失われてしまった。映画コレクターとしての喜びも、レビューする楽しさも大分薄れた。
 2000年代以降に映画ファンになった方々には理解できない感覚かもしれない。しかしきっとこの状況は映画だけではないだろう。うーむ。