2000年は過ぎました

hellbeyond2010-01-10

 『デス・レース』を観る。
 本作品を観て感心したことが二つある。まず、きっと公開当時好事家たちによって散々言われているだろうが、原典のプロデューサーであるロジャー・コーマンをちゃんと製作総指揮に入れていること。ま、ご老体なので名前を貸しただけというのが実情だろう。しかし、ちゃんと仁義を切っているのを表明することがこうしたディープなファンの多い作品のリメイクにはとても大事。
 もう一つは、リメイク前に存在した売り=アナーキーさ・・・子供や老人をいとも簡単に轢き殺すシーンに代表される・・・を失った代わり、キャラや展開に捻りを加えていること。
 舞台設定を刑務所島としたことも、近未来の風景・風俗を描ききる予算がない本作品としての正しい選択だと言えるだろう。そしてそれはとてもコーマン的な発想とも言える。監督のポール・WS・アンダーソン特有のキッチリ色彩統制がとれた画面の気持ちよさもあり、メインのアクションが及第点程度の作品ながら、鑑賞後の印象は悪くない。但しクライマックス、ヒロインを置き去りにして逃げ去る主人公の情けなさには失笑。これだけはどうにかならなかったのか。本当は一瞬そうなるかと期待した『バニシング・ポイント』のラストまではいかなくとも。


 そして本日はオランダ製立て篭りバイオレンス『極悪犯!銃弾の掟』('84)のハリウッド的真っ当な演出にも舌鼓。深い森の奥に棲む密猟一家と銀行襲撃犯のやり取りは適度に舞台を変えたインターミッション(担当は保安官)を挟みつつ展開する。父母、姉弟、赤子の家族VS二人の襲撃犯(一人は手負い)という力関係も絶妙で、何度も登場する逆転の可能性シーンがとても緊張感のあるものになっている。そして付近に演習駐屯中の陸軍どもが絡んでくる中盤とラストの一大アクションは一気に物量の気持ちよさを見せる。何にせよ、ちゃんとキャラを描いたからこそのバイオレンスであり、アクションであり、その果ての死であることを確認。
 オランダ映画はこれと『アムステルダム無情』のディック・マース作品しか知らぬが、娯楽という線を踏み外さない手堅さが特徴か。そういや『極悪犯〜』の主演がヒドゥ・マースとなってるけど関係者なんだろうか?