『殺しのデザイア』

hellbeyond2005-01-06

酷い邦題。でも原題も『DEADLY INNOCENTS』なのでフォローのしようがない。
でも、これがアメリカの田舎町の小さな人間関係を最大限活用した秀作サイコものだった。


テーマは二重性。
登場人物たち各々がどこかしら二面的な性格を持って描かれている。その中で裏表の無い真面目な保安官助手(『最終生物バイオゾイド』のアンドリュー・スティーブンスが嫌味の無いハンサム振りで好演)と主人公、そして白痴の少女だけが生き残るという構図を見ると、案外真面目な映画なのかも。映画自体は割と奔放な描写で観客の野次馬根性を刺激してたが…。
主人公は狂信的なキリスト教信者の父(でも町外れでガソリンスタンド経営、ヤク中のホワイトトラッシュ)を持つハイティーンの少女。死んだ母親が男癖が悪かったために男のようにして育てられていた。
そんな彼女が隠し部屋で母のドレスをこっそり着たりしてると父親がヤク切れで死亡。天涯孤独となった彼女のもとに熱心なキリスト教信者の近所のババアが尋ねてくるが(「あなたのお父さん、保険には入ってたのかしら?」)、皿を投げて追い払う。
優しくハンサムな保安官助手との蜜月も近いかと思われたその頃、近所の精神病院から二重人格のサイコ女(美人)が脱走する。髪を染め、出自を隠し、少女のガソリンスタンドに居着く女。
女は少女に化粧の仕方など教え、二人の共同生活は上手く行くかと思われたが、ガススタンドの客相手に女のサイコっぷりが段々と頭角を現わし…。
登場人物が一人として無駄に存在せず、細かい伏線まで(多少ありきたりなストーリー運びの感はあるが)丁寧に拾ったその後味は悪いものではない。
というかそういった映画的センスが基本的に揃った上で、性的に抑圧された少女(アメリカの田舎町という閉鎖社会の雰囲気もナイス)が町外れのボロ屋で人知れず魅力的になっていくひそやかな(でも自意識過剰な)エロティックさがこの作品の美味しさ。
これは主演のマリー・クロスビーが可愛くなければ成立しない話なので、そういう意味でも成功です。


’88年作品。発売は誰も知らないBALLOON VIDEO。ここの発売作品にはジョン・サクソン監督の隠れたゾンビ映画の傑作『地獄のデスプリズン』もあるので侮れません。



さて、仕事に行くかな。