『ジャグラー』『ハード・デイズ』

hellbeyond2005-01-10

本日は二本の秀作バイオレンスを鑑賞。


一本は映画撮影に対する協力体勢が強力で、オールロケの作品を多く生み出しているN.Y.が舞台の誘拐チェイスもの『ジャグラー/NY25時』('80)。


タイトルの意味は「ふんだくる奴」。転じて本編中では生活苦の市民から搾取する支配層を意味している。
朝。ニューヨーカーの定番朝食、ダブル目玉焼きとソーセージを注文する男。
食事を終えた男はセントラルパーク脇で学校へ向かう途中の少女を誘拐する。
これを発端に、少女の父親による誘拐目撃→追跡から犯人との決闘までを朝から夜までのたった一日で濃厚に描くというコンパクトなストーリーがいい。
ポルノ街、プエルトリコ人街、ダウンタウンの警察署、取り壊されていく廃墟と化した老朽化ビルなどストーリーを上手く盛り上げつつ流れるように登場するN.Y.の裏名所が愛情をもって描かれていく(その場所が持つ汚さは提示しつつ、それでもそこに棲む人々に対する愛のある視点が素晴らしい!)。更には市政の腐敗、警察の不祥事、ずさんな都市計画などが主人公の追跡を妨げていく。こういう本筋以外の要素を持ちつつ、ストーリーが全く淀まないんですよ。主人公がじっとしてるシーンなんて全く無い。
これ以上のエンターテイメントがあるかってんだ!
ハイライトはオープニングの犯人V.S.主人公のカーチェイスと、主人公に恨みを持つ刑事が街中でショットガン片手に(!)主人公を追うシーン。この2シーンの迫力はエキストラのリアクションのリアリティ、妥協の無いカメラワークも相俟ってN.Y.の映画史に残る名アクションシーンだと思う。
監督は『タービュランス』のロバート・バトラー。主演のお父さんはあら懐かしいジェームス・ブローリンでした。
これDVD化しないのかな。恐らく現在ショップでビデオを目にすることはほぼ無いかと…。少なくとも地元の藤沢で見かけたことは無いなあ。


さてもう一本。
ジョナサン・デミ提供/ノーマン・リーダス主演の『ハードデイズ』(’98)。
しかしこのタイトル…しつこいようですが売る気あります?


元娼婦の母親(デボラ・ハリーですよ!しかも本編中歌うシーンもあり…!)に溺愛されて育ったバーガーショップ勤務の冴えない青年。悪友の誘いで取り立ての仕事につくが、初仕事から才能を発揮(暴力を目にすると客が母親を殴打していた過去がフラッシュバック)して、あとはとんとん拍子にチンケな工場街のチンケなギャング団の幹部にまでのしあが…らない。何となくボスからは距離を置いて、ボスのメイドをしている脚の不自由な女の子に恋をしたり、あい変わらず支配的な母親に「うん。ママ」なんて言ったりしている。
とはいえその暴力性は高く評価され続けるが、彼女を母親に引き合わせたことをきっかけに大きく頭のネジが弛んでいく…。


勿論バイオレンスはテンコ盛りでそれはそれで見せ場なのだけど、ストーリー(主人公の人生)に大きく影響を与えていくのは、自分を他の人格に当てはめないと上手くセックス出来なかったり、母親との微妙な力関係における日常生活だったりという非常に個人的なことがらだったりする。
いきおい浮ついた所のない青春映画に仕上がっていて感心していたのだが、急展開の凄すぎるラストにおいて非常にびっくりした。
いや…それまでのストーリー運びから想像出来ない展開では無いんだけど。
凄い倫理上の淀み感とは裏腹にティピカルな映画的開放感&幸福感溢れたあのラストシーン…。
久々に暴力的な映画で衝撃を受けました。
原題は『SIX WAYS TO SUNDAY』。意味はメチャクチャすること。


あと特筆すべきは、主人公の恋人役のエリナ・ローウェンソーンの魅力。
最初画面に登場した時は幸薄そうなひとだなあと思ってたけど、脚が不自由で移民という設定で外見的特徴を強調し、それを「魅力」までに昇華していた。ちょっと困ったような顔がすごくいいんです。
ザコンで恋愛に不器用な青年に戸惑いながら心を開いていく描写とか、どんな恋愛映画より恋愛映画的!主人公との関係を護ろうと母親に決然と立ち向かう様なんて、もう!
…どうやらハル・ハートリー作品に良く出演している人のようです。
あっ、あと汚職刑事役でアイザック・ヘイズが出てましたよ。



個人的なことですが自分の作品『NOTICE』のアフレコは2/20日に鎌倉芸術館のスタジオに決まりました。