『ビロウ』

hellbeyond2005-01-11

久々の大作である。
物語は潜水艦に舞台を変えた『イベント・ホライゾン』とでも言うか、言わばゴーストハウスもの。


物語が7割くらい進むまでは傑作だと思えた。敵の潜水艦や船内で度々表れる幽霊など見せ過ぎないことによる恐怖を貫き、潜水艦の脆さを強調して戦争映画としてのスリルも十分。キャラクターの見分けがつかないのが気なるが、別に判らなくても問題ないストーリーだし。
しかし物語は過って沈没させた船を隠蔽しようとする上官の陰謀を軸に展開するので、過去の因縁、場所が持つ邪悪な歴史等は語られない。…ここで脚本/監督のデビッド・トゥーヒーのジャンルに対する愛の無さが露見している。
一般に秀作とされ、スピンオフの続編まで造られた『ピッチブラック』にしても、面白さのツボを全て外した失敗作だった。
少なくともキャラクターや舞台設定などは『ピッチ…』より活かされている。
さて終盤。そこまで超常現象の恐怖でほぼ全編スリルを盛り上げてきたのに、突然脈絡なく主人公たちが以前の事件の謎解きを始める。おいおい。この潜水艦は沈没しそうなんだよ?しかし謎解きが始まってからは沈没の危機も幽霊の存在もないがしろにされ、ラストはヘナチョコ上官の自害で全部解決。


思えば心霊現象シーンなんてほぼ特殊効果チームと撮影班の仕事なんだから、監督の技量では無いのである。ったく自分で脚本しときながらこの体たらくは何なんだ!『デス・シップ』(’80)を見習え!


…ま、素晴らしいセットと小道具を見るだけでも鑑賞の価値はあります。
何かの機会にどうぞ。