夕焼けの効能

　今日、久々に赤紫の夕焼けを見た。
　梅雨時にこんな色の空を見られるのは稀有なことじゃあないだろうか。
　余りにあざやかで、カメラを持って比較的空が広い階段の窓へ走る。

　アングルを変え、天地の比率を変えて撮っていく間にも、その色は変わっていく。
　ファインダーばかりを覗いていては決して見ることの出来ないもの。それに気づくとき、映画を作る自分の決心が少しだけ揺らぐ。
　そんな時、はす向かいのアパートのベランダに、小学生くらいだろうか、携帯を片手に持った少女が出てきているのに気づいた。一生懸命空を仰いで携帯を掲げ、自分と同じように空を映している。
　見れば、その子以外にも何人かの人間が空を映すためにベランダや窓辺に現れていた。
　幽かな連帯感。

　そして、そんなものが、ファインダーの前に自分を引き戻してくれたりもする。