苦渋に満ちあふれた。

hellbeyond2007-02-16

 昨日は途中まで観ていた『エド・ウッド』を最後まで観た。


 …ずるいよ、これ。
 自主だろうが商業作品だろうが、少しでも映画製作に関わった人間であれば、本作品に心を「動かされない」ことは難しいだろう。駆け出し写真家にとっての『I LOVE ペッカー』みたいなモン。本作のジョニー・デップが素晴らしいのは、女装が滑稽にも似合うからではなく、エドの面影を確かに感じさせたからでもなく、エド・ウッドが狂乱の中にも自分の無能さに「薄々気付く」瞬間を確かに見せたからだ。エドがただの狂人ではないからこそ、本作が多くの人の心に残ったのだと思う。
 誰しも「あ…イマ自分のしてる仕事(作ってる作品、下した決断…)、駄目かも」って思う瞬間、あるだろう。でも集団が凄い勢いでケツに向かって動いている中、その勢いを止める訳にはいかないのだ。エド・ウッドだろうがジェームス・キャメロンだろうが映画監督は常に現場の最高権力者であるが、その監督にさえ許されないのだ、「現場を止める」ことは。それをしなかったという点においてエド・ウッドは映画監督たりえていたといえるだろう(資金繰りがつかなくなってやむなく中断、は何回かあるけど)。


 鑑賞後、港北ニュータウン方向へ買い出し。久々の自転車行。病後だが、体力は余り落ちていないようだ。良かった。
 しかしこの街は多摩ニュータウン以上に無機質だな。何となく初期のクローネンバーグ作品っぽい。ガラス張りの巨大な商業ビルがずーっと続いて、その中に何故かポツポツとビデオ屋がある。
 パゾリーニ作品数本、石井輝男の『温泉あんま芸者』、豊田監督の(私は余り好きではない)『ポルノスター』、『去年マリエンバードで』『プレデターソルジャー』など購入。オークションに出した。自分的には劣悪な画質、読めない字幕(読めない字幕を見たことがある人ってどのくらい居るだろう?本当にある。字が汚くて読めない字幕)で一部にファンの多い「ユニバーサルビジョン」が出した『楽園からの脱出』が気になる。熱帯の実験農場主、ジョン博士が何故かカップルの男を殺して女だけ浚い、プランテーションで強制労働させている。解説文の最後には「しかし、女だけの力で、残虐な現場監督に立ち向えるのか」だって。残虐な現場監督って何か画が思い浮かばない。あとジャケットには何故か血まみれの腹出し女が倒れてる回りに猫ちゃんがうろついてるって謎のスチルが。
 惹句は「シュガーよ 偽りの平穏を破壊し尽せ。」
    「快楽地帯は瞬時にして、苦渋に満ちあふれた。」
 …久しぶりにこんなに気になる映画を見つけた。