魔道士が鉈で襲い掛かってきます

hellbeyond2007-07-03

 『ヘルレイザー:ヘルワールド』を観る。


 流石に打ち止めだろ。
 夢落ち連打の展開にDVDをソーサー投げした六作目でそう思ったが、性懲りもなく同じ監督で制作された八作目(!)である。
 作り手と観客の見たいものにズレが生じ始めた三作目がとても良く象徴しているのだが、このシリーズの魅力は間違いなくその「世界観」=「デザインセンス」である。
 一作目はそれを凝縮するため、そして作り手のコントロールの及ばないモノ(現代的な建造物や他国色の強い物品)を排す為に舞台を野中の一軒家に限定した。
 二作目は作り手のデザインで画面を埋めるために「地獄」を舞台とした。
 そういった努力を灰燼に帰すかのような三作目、「NY」を舞台にした画作りには面白さの微塵もなく、街頭でピンヘッドが暴れる、という本来なら見せ場となるべきシーンにおいて、ピンヘッドが予算に気を遣って暴れているのが良く判る腰抜け場面と化していた。
 本作はどうか。
 新味としてネットゲーム(監督達は若者文化を勉強する気がなかったらしく、ゲーム内容が全然面白そうじゃない。問題外である)化したヘルレイザーを見せたり、都市伝説となっている「ラメント・ボックス」をわざとらしく語ったりしている。
 映画の出来を考え合わせると、「無用の長物」以外の何物でもない。それらが恐怖の醸成やストーリー進行に全く寄与していないのだから。
 …目的意識がある魔道士達は、本来なら目的にそぐわない場所には出向かないし、目的を発見したら即行動に移すはずだ。なのだから、「夢落ち」とか「後ろに居る!と思ったらやっぱり居ない」とか、そういうびっくらかし的なことはしてこなかった。今のところ最終作に当たる本作、まあ例によって夢落ち連発である。しかも終盤に差し掛かったところで、主人公達の体験した恐怖はすべて「幻覚」だったことが明らかになる。
 別にたいしたビジョンは提示されていなかったので「あ、そう」って感じだが。
 このところ駄目続編に連続当番(否誤植)ですっかり評判を落としたヘンリクセン叔父さんが本作の最後の犠牲者。
 あ、そうそう。この「犠牲者」って表現が出てきてしまう辺り、作り手の最たる誤解が見えてる。魔道士は別に殺しが目的で回廊を徘徊しているわけじゃないでしょ。殺しに来るんじゃなくて、連れ去りに来るんでしょ。その理解不能な価値観が怖かったはずなのに。


 本日の画像は、本作用に制作されて没になったらしい魔道士画像。
 こんな素敵なデザインを没にして、何時までもピンヘッド+チャタール(歯を噛み合せてる奴)がうろうろしてる時点で監督/特殊メイク担当クビ!