閉塞感が大事。

hellbeyond2009-03-25

 『デュカネ 小さな潜水夫』を観終わる。『墓地を見おろす家』も読み終わる。
 自転車に乗った兄弟が夏休み、祖父の持つ掃海艇へとひた走るオープニングが爽やかで期待させるが、『デュカネ』はお金のかかり具合(=世界的成功を求めるスポンサー)を意識しすぎた愚作。兄弟は劇中ほとんど船の上か海の中。丘に引き止められ、日常の息苦しさを振り払って海に飛び込む少年!…ってな少年時代の熱情を求めてこの作品を観始めたが、そんな感傷は全く排除され、別に今更興味も起きないナチスの秘密兵器やら現代にも渦巻く悪人の陰謀(しかも最後まで観ても何者であったのかよく分からず)やらどうでもいいお話が展開し、出来損ないの海洋アクションに変化。しかも最悪なのは子供映画の体なのに、クライマックスで人死にが出ること。ジャンル映画は興味のない人間に撮らせるなとあれ程。


 小説『墓地を見おろす家』は傑作である。
 主人公の人生に対するさばさば具合、発生する怪現象のダイナミズム、そしてそれが展開するロケーションのスケールの大きさなど日本のというよりは西洋怪談の趣である。それも、キッチリ想像力を喚起する類の。
 「溶ける」くだりの白昼夢的感覚が若干その他部分とのイメージ上の齟齬をきたしていた気もするが、それはごく些細なことだ。具体像を見せずに(小説だけど)終わらせて、消化不良感ではなく後味の悪さを残す。
 ううむ。上手い。