BAD SEED
『エスター』を観る。
これは久々に現れた養子系ホラーの秀作だ。
あの公園のシーン!
日常の中に不意にたち現れる恐怖。それが自分を取り囲んで、世界の見えかたすら変えてしまうことがある。夜中起きてトイレに向かう道中。ふっと暗闇の中で不吉な顔を思い浮かべてしまったときの、あの総毛立つ感覚。
それを、基本的な映画技法の中で表現すること。
やはり真面目な作り手が製作したホラーは良い。
視点は自在に子供と大人を行き来し、大人を頼れない不安感と子供を理解できないという冷たい恐怖が両方味わえるという稀有な構成。
倫理的にギリギリのラインまで「モンスター」の出自を貶め(こういう表現が危険なことは判っているが、この作品の表現は明らかにそうなので)、観客に嫌悪感、忌避感を持たせることにも緻密な努力をしている。
DVD版はラストカットの適当さが玉に瑕(カイル・クーパーのタイトルロールが直後にそれを救いはするものの)だが、ま、瑣末なことだと言っておこう。
久々に、面白かった。
(今日の画像は同系統の名作、『死霊懐胎』のアメリカ版VHSジャケ)